ゾウもネズミも人間も、相対的な寿命は同じ
ハツカネズミの心周期は0.1秒、ゾウは3秒
人間を含めた動物はその大きさによって感じる時間が違うという。例えば心臓の心周期(一回ドキンと打つ時間)でいうと、人間は約1秒(1分間に60回)、ハツカネズミは1分間に600回~700回も。1回のドキンに0.1秒しかかかりません。因みに普通のネズミは0.2秒、ネコで0.3秒、ウマで2秒、そしてゾウだと3秒かかる。大きな動物ほど周期が長くゆったりと時間が経過する。体の大きさを体重に置き換えるとすると、どれも体重が重くなるにつれてその4分の1(0.25)乗に比例して時間が長くなることが分かっている。つまり動物の時間は体重に比例すると考えられる。体の大きい動物ほど心周期も呼吸も筋肉の動きもゆっくりになっていくということだ。人間から見るとネズミはチョロチョロ、ゾウはのっしのっし、という動きに感じられるわけである。
ゾウの時間はハツカネズミの時間より18倍違長い
時間が体重の1/4に比例するということは、体重が2倍になると時間が1.2倍長くなる関係になる。体重が10倍になると1.8倍になる。30gのハツカネズミと3tのゾウでは体重が10万倍違うから、時間は18倍違い、ゾウはネズミに比べ時間が18倍ゆっくりだということになる。ネズミからゾウを見たらただ突っ立っているだけで動かない。逆にゾウからネズミを見たらピュッといなくなる。
僕の経験(働きアリの動き)
僕はこんな経験をしたことがある。地面を歩き回る働きアリ。エサを探しに巣から出てはまたエサを運んで巣に戻ってくる。彼らの足の動きをまざまざと見ると非常に速いことに気が付く。また、一瞬目を離しただけでも相当な距離を移動している。人間にはまね出来ないし、これが恐竜だったらこんな動きは絶対にできないなと。あなたも同じように感じた似た経験はきっとあるだろう。
リンゴの木から落ちる!
これだけ時間の長さが違うと時間の持つ意味が動物によって大きく変わってくる。例えばリンゴの木からネズミ、ゾウを同時に落とすと仮定しよう。両方とも同じ物理的時間が流れているが、ネズミは「あっ、落ちる落ちる、どうしよう!」と考えているかも知れません。一方ゾウは「あれっ?」と思っている間に落ちてしまうかも知れません。我々人間は物理学的な時間だけが絶対だと思い込んでいるかも知れないが、それは人間だけの決め事であって他の動物にはそれぞれの「時間」が存在するというわけである。
ネズミもゾウも心臓は15億回打って止まる
哺乳類の場合、色んな動物の寿命を心周期で割ってみると15億という数字が出る。つまり哺乳類の心臓は一生の間に15億回打つという計算になる。ハツカネズミの寿命は2~3年、インドゾウの寿命は70年近いから、ゾウはネズミよりずっと長生きであるが、心拍数を時間の単位として考えるならばゾウもネズミも全く同じ長さだけ生きて死ぬことになる。一生を生きた感覚はゾウもネズミも一緒である。
生物学的にみた人間の寿命は26.3年
そこから計算すると人間の寿命は、なんと26.3年である。しかし安定した食料供給、安全な都市や医療の発達等が飛躍的に人間を長寿化させた要因なのである。実際縄文人の寿命は31年だったという推測値がある。人間本来の寿命はそのくらいなのかも知れない。15~16歳で子供をつくって次の世代に受け継ぐ周期だったのだろう。現代では人生80年と呼ばれて久しく、ともすると100年時代に突入している。そうなると今の私たちの人生は「おまけ」なのかも知れない。「おまけ」の人生を有意義に過ごすことが大切になってくるだろう。
参考 : 本川達雄著 ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学 中公新書